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進行再発乳がん

★★★骨転移が判明したら、早期の段階でビスフォスフォネート治療を
乳がん骨転移の最新治療法

監修:河野範男 東京医科大学病院乳腺科教授
取材・文:池内加寿子
(2007年11月号)


乳がん細胞が破骨細胞を働かせ、破骨細胞が骨を溶かす

乳がん骨転移のメカニズムはかなり解明されてきて、乳がん転移のメカニズムを解明する先駆けとなっている、と河野さん。

骨は特別のタンパクとカルシウムなどのミネラルによって硬い組織となっています。骨の内側には血液細胞を作り出す骨髄があり、栄養を運ぶ多くの血管が直接流れ込んでいます。また、骨には古い骨を溶かして食べる「破骨細胞」と、新しい骨を造る「骨芽細胞」が棲んでいて、古い骨を新しい骨に置き換える新陳代謝を繰り返しています。この「破骨細胞」が、骨転移を成立させる大きなファクターとなります。

「元の臓器から遊離したがん細胞が血液の中を巡り、栄養血管を通って骨髄に到達しても、がん細胞自らが直接硬い骨を砕いて住み着くことはできません。そこでがん細胞は、破骨細胞を活性化させるいろいろな因子(シグナル)を出して働かせ、骨の内側に洞窟のようなスペースを作らせます。そして、その空洞に住み着いて増殖していくのです。シロアリが柱の内側に巣食うのと似ていますね」

破骨細胞はクラゲのような形をした細胞で、がん細胞からの指令(いろいろな因子)によってせっせと働き、酵素や強い酸などで骨を内側から溶かしていきます。骨が溶ける(壊れる)と、骨のなかに含まれている細胞増殖因子が放出されて、がん細胞の増殖能力が強くなり、破骨細胞をさらに活性化して、転移巣を広げていきます。がん細胞と骨とは、このようにいろいろな因子を出し合い、骨転移を拡げていくのです。

「破骨細胞を活性化させるためにがん細胞が産生する因子はいろいろありますが、もっとも重要なのは、PTHrP(副甲状腺ホルモン関連タンパク)という物質です」

PTHrPは副甲状腺ホルモンとよく似たアミノ酸構造をもち、カルシウムを調節する原始的な物質です。正常組織にも存在し、ことに授乳期には乳腺で発現して血液中のカルシウムを乳汁に移行させる働きなどもしています。「じつは、がん細胞にPTHrPが発現している場合、予後(治療後の見通し)はいいという指標にもなるので、矛盾するようですが、この因子を産生しないと破骨細胞を活性化することができず、骨転移が成立しないということがわかっています」

がん転移成立は古くより種と土壌にたとえられ、種(がん)が育ちやすい土壌(臓器)と種それぞれに性質がうまく適合しあったところに転移が成立します。PTHrP産生乳がんにとっては骨はまさに育ちやすい土壌といえるのです。

[骨転移のメカニズムとビスフォスフォネートの作用] 図:骨転移のメカニズムとビスフォスフォネートの作用

治療の基本はビスフォスフォネート

「骨転移の治療をする場合、原則として、まずはビスフォスフォネート製剤の投与が第1選択になります。骨転移の症状が出てきたときはもちろん、症状がなくても骨転移と診断されたときは、乳がん自体の再発治療〔ホルモン療法、化学療法、ハーセプチン(一般名トラスツズマブ)による治療等〕と並行して、早めにビスフォスフォネートを使うと、骨転移の進行や骨折、痛みなどの症状を抑えてQOLを高めることができます」

化学療法を続けながら、骨転移の痛みをモルヒネの増量で抑えていた患者さんが、ビスフォスフォネートによる治療を始めたところ、痛みが次第に軽減。モルヒネの減量ができた例も少なくないそうです。 「ビスフォスフォネート」とは、骨転移の準主役ともいうべき破骨細胞の働きを抑えて、骨転移の有害事象を抑制する画期的な薬剤です。

「ビスフォスフォネートは骨の表面に特異的に吸着して骨表面をコーティングします。このため、破骨細胞が骨に密着できなくなったり、また、骨表面のビスフォスフォネートを食べた破骨細胞が活性を阻害されて、数量的にも減り、骨を溶かせなくなるのです。ビスフォスフォネートは破骨細胞抑制作用以外に抗がん作用、抗血管新生作用なども報告されています」

骨転移には、乳がんに多い「溶骨性骨転移」と前立腺がんや一部の乳がんにみられる「造骨性骨転移」がありますが、破骨細胞はどちらにも関係しているので、強力なビスフォスフォネートであるゾメタ(後述)はいずれにも有効です。ビスフォスフォネートによって破骨細胞の作用が抑制されると、溶けた骨が自然に再生され、骨折の危険や痛みも軽減します。

「骨転移治療の重要な戦略の1つは、圧迫骨折や脊髄神経の圧迫を防ぎ、寝たきり状態や麻痺、痛みなどを予防することです。そのためにも、ビスフォスフォネートは有効です」


抗がん剤投与およびホルモン剤投与による骨粗しょう症とビスフォスフォネート

抗がん剤投与により早く閉経を迎えられた方、および閉経後用いられているアロマターゼ阻害剤(商品名;アリミデックス、フェマーラ、アロマシン)を服用されている方は女性ホルモン(エストロジェン)レベルが極めて低いことから、破骨細胞が活性化され骨粗鬆症になりやすい状況です。

これらの方は1年に1回程度の定期的な骨密度測定が推奨されています。骨密度が骨粗鬆症のレベルに達していれば、骨粗鬆症による骨折予防のためにビスフォスフォネートの使用が勧められています。



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